第33回 全日本実業団トラック&第36回 全日本実業団ロード

第33回 全日本実業団トラック&第36回 全日本実業団ロード

Text=YABU(また聞きリポート) Photo=Kiyo(トラック)&Team DADDY(ロード)

パリンヤ、信州ひとりステージレースの巻

 ツール・ド・とうほく終了からわずか4日後、8月22日早朝からパリンヤは信州に向けひとりクルマを走らせていました。全日本実業団のトラック&ロード大会、さらに乗鞍ヒルクライムと、長野県内で開催される3日連続のレースを転戦するためです。まさに2周連続ステージレース状態、しかも「平日から全部つきあってられんわい」と監督からは言い放たれ、パリンヤ、ひとり涙の旅立ち。そんなわけで、今回は伝聞によるパリンヤひとりステージレースの模様をお伝えします。 


第33回 全日本実業団自転車競技選手権大会

(8月23日、長野県松本市かりがね運動場自転車競技場、周長333m)

第33回大会、333バンクで3種目出場、オール3位表彰台

 かわいい子には旅をさせよ、とばかり?パリンヤを送り出した監督ですが、そこは親心、明くる23日深夜に小岩を発って、早朝、競技場にてパリンヤと合流。まずは最初の種目、午前9時から始まる女子3000m個人追い抜き競走に臨みます。決勝レースのみの一発勝負、パリンヤは最初の1qを出場13選手中トップで通過、次の1qもそのペースを維持しますが、最後の1qでやや失速。それでも自己ベストの4分6秒台をマークしました。しかし、大塚歩(A+○○)、唐見(ピースポルト・バイクシステム)の2選手が1qすぎからパリンヤをしのぐペースで周回、とくに4分を切る好タイムでゴールした大塚選手には脱帽せざるを得ず、パリンヤ、まずは3位表彰台に登ります。
 1時間半後には500mタイムトライアルに出場。個抜き同様3位をゲットしますが、そのタイムが個抜きの入りより遅いというのはいったいどういうわけでしょう? このレースに優勝したのは、今シーズンから自転車競技に挑戦を始めたスケートのオリンピック代表・大菅小百合選手の妹、大菅淳子選手。姉妹揃って速いんですな(監督は、お姉さんよりこの妹さんの方が好みだそうです。何のこっちゃ…)。
 午前中に2レースを消化したパリンヤ、午後はポイントレースに初挑戦。ただでさえトラックを集団で走るのは恐いのに、今回は周長が短くカントのきついバンク。ここはひとつ、心の準備をしっかり整えてスタートラインに立ちたいところだったのですが…。競技本部から一番遠く、駐車場の端にピットを設営したキヨ・チーム、疲れて車内でうつらうつらしていた監督とウォームアップで精神集中していたパリンヤの耳には選手招集の放送が届かないのでした。寝ぼけまなこをこすりながら、周囲に人気がないことに気づいた監督。「あれっ、今、放送で何か言っていた?」と顔を見合わせた二人は猛ダッシュ! 監督は肩にマシンを担ぎ、パリンヤはレーサーシューズをガチャガチャいわせてバンクに走り込むと、すでに他の選手たちはスタート態勢に入っているではありませんか。
 滑り込みセーフでDNSは何とか免れましたが、パリンヤ、ペダルにシューズをはめる間もなくスタート。不慣れなポイントレース、おまけに心の準備はどこかにすっ飛んでいます。先頭交代で前走者がバンクを上がると、そのまま前に踏めばよいものを、パリンヤはつられてバンクを上がってしまい、ホイールがハスって怒鳴られる始末。「すっ、すいませ〜〜ん」というパリンヤの声がバンク中に響き渡ります。ところが、謝りながら走ってラップされることもなく3位でゴールしてしまいました。もう、何だかよくわかりません。審判からは何のおとがめもありませんでしたが、パリンヤ、周囲を冷や冷やさせたことは事実。しかられて半べそで表彰台に上がるという、快挙というか怪挙を成し遂げました。
 ドタバタと3づくしの一日が終わると、監督の親心も売り切れ、「じゃ、まっ、そゆことで」とあっさり帰京してしまいます。パリンヤはまた、ひとり、一人きり。“ツール・ド・信州・第2ステージ”の会場、小川村へ寂しく移動します。

■パリンヤ生まれて初めてのポイントレース、本人以上にまわりの方がドキドキでした

■3000mTTスタート

■500mTTスタート

トラック競技成績

▽ 女子3q個人追い抜き競走(出走13人)
 
順位 名前 所属 タイム

1位
 大塚 歩  A+○○  3分58秒225

2位
 唐見 実世子  ピースポルト・バイクシステム  4分04秒923

3位
 村中 恵美子  千葉医療福祉専門学校・キヨ  4分06秒176

■3000mTT 3位

▽ 女子500mタイムトライアル(出走10人)
 
順位 名前 所属 タイム

1位
 大菅 淳子  三協精機  39秒329

2位
 濱田 真子  スミタ・ラバネロ・パールイズミ  41秒779

3位
 村中 恵美子  千葉医療福祉専門学校・キヨ  42秒070

■500mTT またしても3位

▽ 女子10qポイントレース(出走12人、完走9人、1位と同一周回は3位まで)
 
順位 名前 所属 ポイント

1位
 大塚 歩  A+○○  23ポイント

2位
 杉村 久美     スミタ・ラバネロ・パールイズミ  16ポイント

3位
 村中 恵美子  千葉医療福祉専門学校・キヨ  10ポイント

■ポイントレース しつこく3位


第36回 全日本実業団対抗サイクルロードレース大会・女子個人ロードレース

(8月24日、長野県上水内郡小川村一般公道周回コース、27.8q)

快感ぶっちぎり展開で、メジャータイトル初ゲット!

 ここからはまた聞きのさらにまた聞き。聞くところによると、パリンヤは「かわいがってやってください」と書かれた段ボール箱に入った状態で、ひとり小川村にたたずんでおったそうな。それを見かねたTeam DADDYさんとエキップUさんが、補給などのサポートを引き受けてくれることに。パリンヤ、大いに感激しレースに臨んだそうです。
 山間部に設けられたコースは1周回の標高差が470m強もあり、女子はその壁を2度登る1.5周回、27.8qを走ります。15時45分という遅い時間に女子個人ロードレースはスタート。パリンヤには厳しい登りも幸いしたのか、短い走行距離にもかかわらず2位に2分差をつけての独走で見事優勝しました。今年6月の全日本ロードで入賞した選手は、パリンヤを除き出場していませんでしたが、その分、ぶっちぎりの走りで力を示せたといえるでしょう。
 実業団の女子ロードレースは、ここ数年、カテゴリー分けが錯綜しており、上位カテゴリーの女子エリートは男子セカンドランクのBR-2と同レースに出走。ルールではタイムアウトもBR-2の先頭から換算されます。とくに力のある選手は男子に引いてもらう形でペースを上げ完走できますが、ほとんどの選手はタイムアウトとなる展開が続いてきました。女子エリートの下位には、周回数の少ないレースを走る女子オープンというカテゴリーが設けられていました。
 昨年の全日本実業団ロード・女子エリート部門は、完走者1名、残りは全員リタイヤ(パリンヤも1周回を残して涙を飲みました)という展開となりました。これではレースとして成立するのか疑問に思っていたところ、今年のレースパンフレットには女子エリート、女子オープンというカテゴリー分けはなく、女子は単独部門となっており、大部分の女子選手はそのレースにエントリーしています。
 JCFランキング10位以内の女子選手で希望者は男子のレースであるBR-2と走ることができると実施要項には記載されており、実際、2名の女子選手の名前がBR-2エントリー表にありましたが、完走はできなかったようです。完走できた場合、実業団ロードの女子タイトルはどのような扱いになったのでしょうか?(BR-2出走の女子選手は、実施要項にはただ「男子扱い」とだけ記載されています)。
 カテゴリーの問題は何だか混乱していますが、とにかく、村中<パリンヤ>恵美子が全日本実業団女子ロードタイトルを獲得したことはめでたい事実。Team DADDYさん、エキップUさん、たいへんお世話になりました。ありがとうございました。
 さて、スタート時刻が遅かったため、表彰式を終え会場を後にする頃にはすっかり日が暮れてしまいました。ドマーニの皆さんが待つ乗鞍には、夜の山道を2時間半の孤独なドライブの末、やっと辿り着いたそうです。ツール・ド・信州、残すはあと一日。最終“乗鞍ステージ”の模様はパリンヤ本人か「乗鞍くん」で一夏もがき抜いたKoishizawa2さんの実走レポートがあるかも、というので、そちらにバトンタッチいたします。

▽女子個人ロード成績(出走18人、完走8人)
 
順位 名前 所属 タイム

1位
 村中恵美子  千葉医療福祉専門学校・キヨ  1時間12分12秒

2位
 坂田 佳子  TeamPOLPO  1時間14分12秒

3位
 西 加南子  スミタ・ラバネロ・パールイズミ  1時間16分54秒


■2位を大きく離して独走状態のパリンヤ

■パリンヤ勝利の舞い

■国歌斉唱?なわけないか

■ヤッパ表彰台は真中がいいです

■副賞は野菜の詰合せ


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